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解析事例−s20EXAMPLE-s20

新寿命規格(ISO281:2007)による円筒ころ軸受の修正定格寿命計算

事例s17ではφ12×12円筒ころの転がり疲労耐久試験結果と、EPC法によるROBPACS寿命計算結果を比較しましたが、ここではこの結果に対して、新寿命規格であるISO281:2007またはJIS B 1518:2013に対応した修正定格寿命計算を行います。
ころ分割数は、荷重計算、疲労限荷重計算のいずれの場合も200分割とし、EPC法を用いて計算します。

                 
               図1 φ12×12円筒ころ(耐久試験ではφ20円筒ころと接触)

    表1 φ12×12円筒ころの転がり疲労耐久試験結果(事例s10より)
   

【計算の前提1】
事例s17同様、計算は φ12の転走面直径(溝径)を有する内輪と、φ20の転動体を1個有する軸受(PCD=24)に表1の負荷が作用するとして軸受寿命を計算します。
なお、事例s10やs17では内輪寿命を用いましたが、新寿命規格では軸受基本定格寿命L10に対して修正寿命係数aISOを乗ずるため、ここでは、内輪寿命ではなく軸受寿命(基本定格寿命)L10を使用します。本例ではいずれの場合も外輪寿命は内輪寿命の100倍以上あるため、内輪寿命と軸受寿命はほとんど同じであり、軸受寿命を用いて比較することに問題はありません。

繰返しになりますが、事例s10,s17同様、疲労耐久試験がφ12円筒ころ単体で行われているため、ROBPACSで軸受として解析するには無理があります。ここでは、クラウニングによって変化する転がり疲労寿命計算比較を目的としており、この目的には利用可能と考えます。

【計算の前提2】
修正定格寿命Lnmは次式で表されますが、ここでは信頼度係数a1=1として、寿命修正係数aISOを基本定格寿命L10に乗じてLnmとします。
   Lnm=a1*aISO*L10

【計算の前提3】
修正寿命係数aISOの計算では、汚染係数、粘度比がいずれも1.0であるとして、計算します。


<解析結果>

表1に示すように、クラウニング形状はV1〜V5に代表される5種類であるため、接触面圧が1500MPaとなる疲労限荷重も5種類となります。図2は、V1〜V5の疲労限荷重、図3は疲労限荷重時の接触面圧分布を表したものです。

    
                   図2 疲労限荷重

    
                図3 疲労限荷重時の接触面圧分布

V1〜V4はころ中央部で疲労限荷重が決定されていますが、V5はクラウニングが付与されていないため、エッジ部で疲労限荷重が決定されています。また、V1からV4に向かうにつれ接触領域が増加しており、このため単一接触時の疲労限荷重Quは増加しています。これらの結果から、単一接触時の疲労限荷重Quを最大にするには、ころ軸方向負荷領域が全域となり、かつ、その接触面圧が1500MPaである場合が最大であると考えられますが、これは計算上の最大値であり、実情に合っているかどうかは検証が必要です。

図4は、上記疲労限荷重計算結果を用いて修正定格寿命Lnmを計算したもので、基本定格寿命L10も併せてプロットしています。
   
                図4 修正定格寿命計算結果

図5は図4の修正定格寿命計算に使用した寿命修正係数aISOの値です。今回の事例ではaISOの値は、いずれも1.0より小さい値となっています。この理由は、負荷荷重が大きく、疲労限荷重を超えているためと考えられます。
   
                   図5 修正寿命係数

修正定格寿命Lnmの計算は、従来の基本定格寿命L10に対して、図5のaISO値を乗じて算出しているため、aISOの傾向からV1〜V5における寿命最大値はV3,V4寄りに移動していると考えられます。実験ではV1〜V5における最適なクラウニングRはV2〜V3の間にあると記載されていますが、修正定格寿命を用いて最適クラウニングRを求めると、実験結果から外れる方向に最適クラウニングRが移動していることになります。
この理由は、実験での最適クラウニングRは負荷荷重13.72kNの時のものですが、上述のように、単一接触時の疲労限荷重Quを大きくするクラウニング形状がaISO値を大きくするため、このときのクラウニング形状が修正定格寿命を大きくすると考えられ、これが実験結果の最適クラウニングRからずれてくる原因であると考えられます。このため、単純に修正定格寿命値をもって最適クラウニングRを決定すると従来の最適クラウニングとずれてしまい、正しい結果が得られているのかどうか、十分な検証が必要であると考えます。


以上の結果より、修正定格寿命を使用するには、原理を理解し十分に検討した上で、使用することが必要であるといえます。

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